3回目 学習指導要領の教科の各分野の目標とは?(地理大項目B世界の様々な地域)
こんにちは
鹿児島県での教員採用試験合格を目指している
ヤマシロです
本日は
学習指導要領の地理分野のB(世界の様々な地域)の内容・取り扱いをまとめました
地理分野Aの内容はこちら→(大項目A 「世界と日本の地域構成」解説)
そもそも学習指導要領って?
以前にも書きましたが
全国のどの地域で教育を受けても、一定の水準の教育を受けられるようにするため、文部科学省では、学校教育法等に基づき、各学校で教育課程(カリキュラム)を編成する際の基準を定めています。これを「学習指導要領」といいます。
文科省HPより
また
中央教育審議会答申では
「社会に開かれた教育課程」の実現を目指すための、学校、家庭、地域の関係者が共有・活用できる「学びの地図」
とあります
児童生徒の教科書や時間割のもとになっているもので
教師にとっては学校で授業する際の指示書になります
「世界の様々な地域」の内容と取扱
Bの「世界の様々な地域」の大単元に取り組む前に
Aの「世界と日本の地域構成」に取り組んでおくこと(学習指導要領に踏まえてという文言もあるので)
Bの「世界の様々な地域」の学習のねらいは
世界の地理的認識を養うこと
そのために
2つの中項目を設定している
- 世界各地の人々の生活と環境
- 世界の諸地域
各中項目を見ていく
「世界各地の人々の生活と環境」について
指導する内容
場所、人、自然の相互依存関係を知り、課題の追及と解決する活動に取り組ませる
身につける知識
- その地域の人の生活は、その地域の自然や社会的影響を受けるという事
- 世界各地の生活の多様性を変化(歴史)と現在で知る
- 世界の主な宗教
- 衣食住の特色
少し詳しく掘ると
人の生活は自然環境だけじゃなく社会的条件も影響してくる(自然環境決定論ではダメ)
人間が自然に影響を与えるといいう関係は両社が依存しあっている関係を意味している
歴史的な背景や民族構成などから、伝統文化による生活が、新しい文化や技術、経済活動などで変化することも理解することが大切
衣食住を中心に見るが、過去と現在を比較して変化があることにも気づかせる
世界の宗教に関しては「仏教」「キリスト教」「イスラム教」の分布を大体で読み取れるようにすることも大切
身につける思考判断表現
・上の知識の項目を多面的・多角的に考察し、表現できるように指導する
「なぜ」を常に持ち続けさせる指導が大切
なぜそのような生活をしているのか
なぜそのような生活の変化があったのかなど
例えば、寒い地域、暑い地域、山岳地帯、島嶼地域などでの衣食住の変化が挙げられる
寒い地域の暮らしの変化ではイヌイットの生活の変化がわかりやすい
イヌイットの例
大昔(紀元10世紀ごろ)はボートや狩猟用具でクジラを捕って食べていた
12世紀ごろの気候変動(寒冷化)により北極クジラの数が減少(食生活の変化)
アザラシやシロイルカ、ホッキョクグマ、トナカイ、ジャコウウシ、魚、ブルーベリーなど
現代で言う「イヌイットの伝統的な食事」のはじまり
でも、現代のイヌイットの食生活は大きく変化しています
そこには、1950年代後半から始まった
カナダ政府によるイヌイット定住化政策という社会的影響があります
社会環境が大きく変わり
- 社会福祉サービスの充実
- インフラ整備(重油発電)
- 情報通信の普及(テレビや電話など)
- アクセス整備(貨物輸送船など)
- イヌイット以外の人口が増える
といった変化があります
電気の普及で冷蔵庫による長期保存が可能になり
電子レンジの普及で料理の幅が広がり
ライフルやスノーモービルを使うことで狩猟の幅が広がる
様々な調味料が手に入ることで味の多様化が生まれ
栄養過多による肥満や糖尿病なども出てきています
また、環境問題による影響もあります
狩猟による獲物の体内に残る重金属含有量が多いなどといった問題もあるようです
これはあくまでも一例ですが
気候や地形、民族の分布や宗教、自然環境や社会的条件様々なものが結びついて「今」を形成しているという事を多角的・多面的にとらえ発表などで表現できる取り組みが大切
内容の取扱い
- 生活の特色
- 生活の変容の理由
- その地域の自然
- その地域の社会的条件
これらの関係性を考察するときに「衣食住」「宗教」との関りを取り上げて指導する
まず、衣食住の特徴はとらえやすいと考えられるので
衣食住を知り、生活の特色を捉え、自然や社会的条件との関係に入るようにする
宗教に関しては、一方的な見方で、固定観念にとらわれることなく指導することが大切
例えば、イスラム教と言えば過激なテロリストといった間違った見方になってしまわないように取り扱う
自分たちの生活が「正しい」とか「普通」といった見方にならないように
他地域の文化や生活、宗教を尊重する態度が身に付くよう指導、教授する必要がある
ねらいや着目点
主なねらいは
場所、人、自然の相互依存関係に着目して、自然的条件と社会的条件を関連付けて
多面的・多角的に考察し表現できることがねらい
具体的にどういった場所を着目させるのかというと
例えば、気候や植生、集落や道路などの様子から特徴を捉えさせる
人と自然の相互依存関係の着目点として
気候が人に与える衣食住への影響であったり
人が地域開発によって自然へ与えている影響などを捉えさせる
「世界の諸地域」について
指導する内容
まず、指導する地域は6つの州
- アジア
- ヨーロッパ
- アフリカ
- 北アメリカ
- 南アメリカ
- オセアニア
世界各地の地球的課題は、その地域ごとであらわれ方が異なる。それは、地域的な特色の影響を受けているという事を理解させる
各州で暮らす人々の生活から地域的特色の大体を知る
各州の地域的特色は大体でわかると大丈夫だが、生活の様子などは的確に把握、理解できる事柄を取り上げることが大切、それと地球的課題を関連付けて指導する
地球的課題は、地域間の共通性を見つけ、日本の国土の認識を深めることで持続可能な社会づくりとつながっていることを理解させる
地球的課題は州ごとに異なるものにすること
地球的課題の要因や影響を地域的特色と関連付けて多面的・多角的に考察でき表現できるよう指導する
ねらいや着目点
世界各地の地球的課題の要因や影響を、その地域的特色と関連付けて多面的・多角的に考察し、課題と地域的特色の関係を理解できるようにすることがねらい
地球的課題とは「持続可能な開発目標(SDGs)」などでしめされた課題
(人類がこの地球で暮らし続けていくために、2030年までに達成すべき目標)
サスティナブル デベロップメント ゴールズ
(持続・可能) (開発) (目標)
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなに。そしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 産業と技術革新の基盤を作ろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくりを
- つくる責任、つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさも守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
上にはSDGsで掲げられた17の目標を書きました
学習指導要領内にはこういった課題が例として書かれています
- 地球環境問題
- 資源、エネルギー問題
- 人口、食糧問題
- 居住、都市問題など様々
これらを「各国」ではなく「各州」の課題として取り上げるように書いています(州内の前部の地域に該当する必要は無い)
そして、これらの問題は世界の共通の課題ではあるが、地域によって要因・影響・対処の仕方が違うという事を理解させることが大切
授業においてはどのジャンルを設定するかも、生徒の状況を考えて設定する必要がある
各州の人々の暮らしを羅列的・網羅的に知識を詰め込むのではなく、生徒にもわかりやすい衣食住のイメージを構成することが必要
生活様式は違うけれど、同じ人間の営み(生活)の仕方の違いを、自分たちの住んでる地域での暮らしとも比較させながら理解することが大切
こういった「各州」の生活様式の違いを扱うのは良いが「各国」まで細分化してはダメ
ここでの目的としては
「概略的な世界像が形成できる」こと
各州の自然、産業、生活、文化、歴史などを概観した結果が基礎的知識と結びつくようにする
どの州から学ぶかはあなた次第(生徒の学習理解度、難易度、授業時間数など)
視覚教材や関連事物を扱うことで生徒の興味関心を引き、生徒の生活経験と結びついた情報をわかりやすく習得させていくことが大切
学習指導要領にある各州を学ぶ順番(あくまでも例です)
① アジア州:<主題例>人口の増加,居住環境の変化に関わる課題など
アジア州を大観する学習を踏まえて,例えば,中華人民共和国(以下,中国という。)を対象に「中国では人口問題に対してどのような対策が取られてきたのか」,「経済発展した中国で,なぜ居住環境の問題が起きているのか」などといった問いを立て,前者の場合,中国における人口動態,国内の経済格差,地域間の人口移動などを地域の人々の生活と関連付けて多面的・多角的に考察して,人口問題に関わる一般的課題と中国における地域特有の課題とを捉える。
② ヨーロッパ州:<主題例>国家統合,文化の多様性に関わる課題などヨーロッパ州を大観する学習を踏まえて,例えば,ヨーロッパ連合(以下,EU という。)を対象に「EU はどのような経緯でその構成国を変化させてきたのか」,「EU の構成国内で,なぜ分離や独立などの動きが見られるのか」などといった問いを立て,前者の場合,EU の空間的広がり,EU 統合の歴史的背景,EU 統合がもたらす成果と課題などを地域の人々の生活と関連付けて多面的・多角的に考察して,国家間の結び付きに関わる一般的課題と EU における地域特有の課題とを捉える。
③ アフリカ州:<主題例>耕作地の砂漠化,経済支援に関わる課題など
アフリカ州を大観する学習を踏まえて,例えば,サヘル地域を対象に「サヘル地域では砂漠化によって,どのような問題が生じているのか」,「サヘル地域の砂漠化に対して,なぜ諸外国の支援が必要なのか」などといった問いを立て,前者の場合,サヘル地域の自然環境,地域経済の変化,地域内の食料需給などを地域の人々の生活と関連付けて多面的・多角的に考察して,食料問題に関わる一般的課題とサヘル地域における地域特有の課題とを捉える。
④ 北アメリカ州:<主題例>農業地域の分布,産業構造の変化に関わる課題など
北アメリカ州を大観する学習を踏まえて,例えば,アメリカ合衆国(以下,アメリカという。)を対象に「アメリカでは農業地域の分布にどのような特色があるのか」,「なぜアメリカは,世界有数の経済大国となっているのか」などといった問いを立て,前者の場合,アメリカの自然環境,都市の分布,交通網の整備などを地域の人々の生活と関連付けて多面的・多角的に考察して,産業の立地に関わる一般的課題とアメリカにおける地域特有の課題とを捉える。
⑤ 南アメリカ州:<主題例>森林の伐採と開発,商品作物の栽培に関わる課題など
南アメリカ州を大観する学習を踏まえて,例えば,ブラジルを対象に「ブラジルでは森林の耕地化が進んだ結果,どのような問題が生じているのか」,「なぜブラジルでは,コーヒーから大豆などへと栽培作物が変化しているのか」などといった問いを立て,前者の場合,森林と耕地面積の変化,農産物の生産,生物多様性などを地域の人々の生活と関連付けて多面的・多角的に考察して,持続可能な開発に関わる一般的課題とブラジルにおける地域特有の課題とを捉える。
⑥ オセアニア州:<主題例>多文化社会,貿易に関わる課題など
オセアニア州を大観する学習を踏まえて,例えば,オーストラリアを対象に「オーストラリアでは,民族構成がどのように変化してきたのか」,「なぜオーストラリアでは,アジア諸国との貿易割合が増えているのか」といった問いを立て,前者の場合,先住民との関係,建国の歴史,貿易相手国や移民出身国の変化などを地域の人々の生活と関連付けて多面的・多角的に考察して,多文化社会に関わる一般的課題とオーストラリアにおける地域特有の課題とを捉える。
まとめ
今回は
地理分野のB「世界の様々な地域」の解説でした
「世界各地の人々の生活と環境」「世界の諸地域」この2つの中項目に分けて授業を進めること
州でのまとまりをあつかい、世界的課題の適切なチョイス、「なぜ」を求める姿勢の育成、生活様式や宗教が偏見になってしまわないよう指導することなどが大切です
SDGsにも触れやすいタイミングなので、教師側としても「持続可能な開発目標」を頭の隅にでも入れておきましょう
おつかれさまでした