【学習理論】教員採用試験対策 13(教育心理)
こんにちは
令和6年度教員採用試験を受けるヤマシロです
鹿児島県の中学社会で受験予定ですので
ご覧になっているアナタも
あなたが受験する都道府県で頑張ってください
今回は
「パブロフの犬」や「スキナー箱」など語句が出てくる分野
【学習理論】
です
人物と実験内容が大切なので今回で整理して覚えましょう
そもそも学習理論とは
学習理論には
心理学の理論・・・学習の原因や仕組みを説明
社会学の理論・・・犯罪・非行の原因や仕組みを説明
2つの分野があり、学習や行動など、勉強だけに限らない
人間(生き物)は、「こうやって学びますよ」という考え方が学習理論という事
今回は
教育心理に関係のある学習理論なので
心理学の理論をみていきます
心理学の学習理論
心理学の学習理論は
- S-R理論(連合説)
- 認知理論
この2つに大きく分けられる
S-R理論(連合説)
S-R理論は連合説とも言い
刺激(Stimulusスティムレス)に結び付いて反応(Responseレスポンス)が起こると考える理論なのでS-R理論と言われています
人間や動物の行動に関する条件づけ(conditioningコンディショニング)の基礎理論となっていて
有名なのが、「パブロフの犬」
古典的条件づけの実験で、内容は
犬に食物を与える前にメトロノームの音を聞かせ、それを繰り返すと、メトロノームの音が聞こえただけで唾液(だえき)が分泌されるようになる
といった実験
犬が何を学習したかと言うと
「メトロノームの音は食物が出てくる合図だ」
と学習したのです
条件づけを利用した心理療法に、行動療法があります(説明はパブロフで)
認知理論
認知理論は、五感(視覚、嗅覚、味覚、触覚、聴覚)の知覚から得られた情報が、それまでの学習に影響を受けて認知されると考える理論
たとえば
トイレの芳香剤がわかりやすいですが
ラベンダー畑へ行くと子供が
「トイレの匂い」と言いました
これは、ラベンダーの香りをトイレの臭(にお)いと認知した結果です
その他
棒の入ったオリに入れたチンパンジーは、オリの外にあるエサを、そのうち、棒を使って取る
チンパンジーが周囲の状況を把握し問題解決に至った結果です
2つの理論の違い
S-R理論(連合説)も認知理論も学ぶ(学習する)ことには変わりないですが
学習に対する考え方は違います
S-R理論などは「行動」が大きく関わってくる分野ですが
学習を「行動の変化」と考えることもあります
パブロフの犬でいうと
音に無反応だった犬が音に反応するよう変化した
ということ
この「行動の変化」は報酬や罰によってもたらされます
おこづかいなどの報酬を与えることもありますが
こういった報酬は、ヒト以外の生き物には有効かもしれませんが
学習者(人間)に悪い影響(意欲や興味の低下)があるという報告もあります
認知理論では
- 学習は主体的な行為
- 学習は知識の変容
- 学習は事前知識が大切
ヒトは、自分の周りの世界に整合性を見出し理解したいという欲求があります
「これはなぜこうなっているのだろう?」
「なぜこうなるのだろう?」
といった問題に対する答えを求める欲や興味を持っているという事があります
何かがもらえるから学ぶのではなく
刺激に対する反応だけではない、経験したことのないことであっても想像したり予測したりすることもできるようになります
今回はどっちが良いのか?
といったテーマではありませんので、そこを踏まえて
学習理論の提唱者と内容を確認していきましょう
各学習理論と人物
先ほどS-R理論(連合説)と認知理論(認知説)とに分けたが
学習理論の提唱者も理論で分けておこう
連合説・・・
- パブロフ(古典的条件付け)
- スキナー(道具的条件付け)
- ソーンダイク(試行錯誤説)
- ワトソン(S-R理論)
認知説・・・
- トールマン(サイン・ゲシュタルト説)
- ケーラー(洞察説)
- パンデューラー(モデリング説)
それではそれぞれの学習理論の内容を見ていきます
パブロフ「古典的条件づけ」(イワン・パブロフ)
生理学者でありロシア人初のノーベル賞受賞者
唾液腺の研究中、研究員の足音で唾液を分泌していることを発見し条件反射の実験を行った
犬にエサをやると同時に、特定の音を聞かせる実験を何度も行い
結果、犬にエサをやらなくて、特定の音を聞かせるだけで
唾液を分泌するようになった
パブロフは
犬は音によって唾液分泌という反応を起こすという学習成果を得た
と報告した
この実験は「パブロフの古典的条件づけ」と呼ばれる
この実験の場合、音(刺激)が「条件刺激」
唾液分泌(刺激により起こる反応)が「条件反応」
ちなみに
音だけを鳴らし続けると次第に反応は消えていくことを「消去」
数日後に同様の実験を行うとまた唾液を分泌するこれを「自発的回復」
スキナー「道具的条件づけ」(バラス・スキナー)
自発的な、操作する人を意味する「オペラント」
スキナー自身の造語で「オペレート(動作する)」から
スキナーは、内部に取り付けたレバーを押せばエサが与えられるという実験装置を使い「条件づけ」の実験を行った
ネズミが箱の中で一連の行動を何度も繰り返すことで
「レバーを押せばエサが出てくる」と学習することを発見した
この実験装置は「スキナーボックス(箱)」とよばれ
ネズミにレバーを押させる行動を促すエサのことを「強化子」
強化子によりレバーを押す行動を促すことを「強化」と言う
こういった、特定の行動をとった場合に
報酬や罰を与えることで
その行動の頻度が高くなったり低くなったりする条件づけを
「道具的条件づけ」「オペラント学習」「スキナー型条件づけ」などという
パブロフの古典的条件づけとの違い
行動を誘発する刺激があるのがパブロフの古典的条件づけ
音(刺激)で唾液の分泌(反応)
行動を誘発する刺激が無いのが「オペラント条件づけ」
ネズミは自発的にレバーを押す
また、引換券(トークン)という集めることによって他の強化子と交換できる強化子があるとする
課題を重ねて行うと手に入る引換券(トークン)によってエサが得られるような学習をさせておくと、チンパンジーは課題を遂行し、トークンを集めエサを得るようになる
ソーンダイク「試行錯誤説」(エドワード・ソーンダイク)
紐を引けば外に出られる実験装置の「問題箱」に猫を入れ
箱の外にエサを置く
問題箱から出ようと猫は試行錯誤(押したり、壁に上がったり、がりがりしたり・・・)する
猫は試行錯誤の中で偶然、紐を引き外に出る
この経験を何度も繰り返すことで
猫は紐を引くと箱から出られることを学習し
箱に入れても紐を引いてすぐに出るようになる
この猫の行動を観察したソーンダイクは
学習は試行錯誤により「刺激」と「反応」が「連合」する【試行錯誤説】を提唱
問題箱の実験は色々な動物で行われ
学習は刺激状況と反応の間の「結合(結びつき)」が強められたり弱められたりする
これを
- 効果の法則・・・適切な反応は生じやすくなり、無駄な反応は無くなっていく法則
- 練習の法則・・・試行錯誤による学習の際、快状態をもたらす効果のある行動は生起しやすくなるという法則
- レディネスの法則・・・学習者が未成熟で準備ができていない状態であれば、学習に効果が出にくいという法則
によって証明した
ワトソン「S-R理論」(ジョン・ブローダス・ワトソン)
「自由意志は錯覚であり、行動は遺伝と環境の両因子の組み合わせによって決定されていく」
人は自らの意志ではなく、遺伝と環境によって行動は決定されている・・・
これが【行動主義】の考えかた
この人物で有名な実験が
「アルバート坊やの実験」
11か月の赤ちゃんであるアルバート君を対象に行った恐怖条件付け
初めに様々な動物やモノを見せ触れさせる
その後、見せた動物の中にいた白いネズミを見せて
アルバート君が触ろうとする行動を行うと
その背後で鋼鉄の棒をハンマーで叩いて大きな音をたてた
実験前アルバート君はネズミを怖がっていなかったが
実験後アルバートはネズミを怖がるようになった
だが、ネズミだけでなくウサギや毛皮のコートなど
白ネズミに似た特徴をもつものにまで恐怖を抱くようになった。
この実験の倫理的、道徳的な考え方は置いておいて
外部からの刺激に対して、どのような・どの程度の反応が生じるかの考え方を
パブロフの項目でも紹介したが
【S-R理論(S-R心理学)】と言う
Sは刺激の「Stimulus(スティムレス)」
Rは反応の「Response(レスポンス)」
こういった行動主義に影響を主な与えた人物は
パブロフ、ソーンダイク、スキナーとワトソンなどがいます
トールマン「サイン・ゲシュタルト説」(エドワード・トールマン)
【サイン・ゲシュタルト説】を説明する上で2つのネズミの実験を紹介します
一つは迷路学習の実験
出口にエサのある迷路にネズミを入れると
最初は道を迷うが、そのうち迷わなくなり
ネズミがどの道順をたどり、どの位置に行けばエサが得られるかという
位置を認識した「認知地図」を形成することを確認した
迷路を何度も経験することで認知地図が形成され
ネズミはエサが出口に無くとも
ゴールまでたどり着くことができるようになるという
これを【潜在学習】と呼んだ
このことから、学習は外部からの刺激を、「サイン」として認知し
認知地図を形成することであるとした実験
もう一つは2つのトビラの実験
ネズミを白と黒のトビラのある箱に入れ
白のトビラを開けるとエサが得られるようにする
するとネズミは白のトビラしか開けなくなるという実験
これが【サイン・ゲシュタルト説】だが
目標(エサ)とそれを導く手段(道順やトビラの色)との関係を知る(認知する)ことが学習を仲介するという考え方
ちなみに「ゲシュタルト心理学」とは
□■■□□■■□□■■□□■■□□■■
このような連続する記号を見た場合
□□のグループと■■のグループが交互に並んでいると見えるだろう
□■と■□とが交互に並んでいるとは見られにくいものである
また下のような図形を見て
欠けた円が2つとラグビーボール型が1つとみるのではなく
円が2つ部分的に重なっていると見えると思う
こういった見方は部分的に見ているのではなく全体に見ている
この全体性をもったまとまりのある構造をドイツ語でゲシュタルト(形態)という
似ている曲を聞いたとき全体的に似ていると感じるのも同じ
円の絵を見て、点の集合、曲線の集合とみるのではないのも同じ
人間の心理現象は要素の総和と考える心理学
ケーラー「洞察説」(ヴォルフガング・ケーラー)
ゲシュタルト心理学の創始者の一人
類人猿が試行錯誤によらない洞察学習を行うことを発見した
ケーラーはチンパンジーの手の届かないところにバナナを置き
それを取らせる「知恵実験」を行った
チンパンジーのオリから離れた場所にバナナを置いておくと
最初は試行錯誤するがあきらめず
しばらくすると短い棒や長い棒を駆使して
バナナを引き寄せることができるようになる
このように問題を解決することを
【洞察による学習】と主張した
エサを天井からつるして道具として箱を用意すると箱を積み上げたりする
このようにエサの場所や道具の種類を変えても
周囲の状況を洞察し「こうすればこうなる」
要素間の関係を把握して問題解決に至る
この考えを【洞察説】という
パンデューラー「モデリング理論」(アルバート・パンデューラー)
社会的学習理論(モデリングによる学習)を提唱した人物
従来の学習理論が、学習する個体(人間や動物)自身の経験を前提としていたのに対し、学習が他の個体の行動を観察することによっても成り立つことを実証した
要するに
人は見て学べることを証明した人物です
この理論は、学習者自身の「直接経験」なしに学習が成立することが特徴で
【社会的学習理論】や【観察学習】とも言われています
モデリング学習にも実験はありました
それが「ボボ人形実験」
子ども達を2つのグループに分け
1つ目のグループにはボボ人形に大人が乱暴している様子を
2つ目のグループにはボボ人形と大人が遊んでいる様子を見せる
その後、子どもを一人ずつ部屋に入れると
1つ目のグループの子供は明らかに攻撃的になっていた
この実験から、明らかな「強化(行動を促す因子)」を与えなくてもモデルの行動を自発的に模倣(真似)することが分かったという実験
この他者の行動やその結果を観察することで学習が成立する【モデリング学習】の過程を4つに分類している
モデリング学習の4つの過程
・注意過程
モデルの行動に注意する過程。重要な特徴に着目し、注意深く観察する
・保持過程
観察者がモデルの行動を再生するために、モデルの行動を符号化し、保持する過程
・運動再生過程
保持されたモデルの行動を実際に再生する過程。
心の中でイメージしたモデルの行動と、観察者自身の行動を一致させることは難しいため、習得した行動を実際に再生し、自分の行動と一致しない部分をフィードバックすることで、行動の洗練度を高めていく
・動機づけ過程
観察者は、学んだ行動のうち、必然的に自分にとって利益になるような行動のみを遂行しようとし、苦痛や罰、嫌な思いを招く行動は回避しようとする。
学んだ行動を続けるか続けないかを決定する動機づけの過程
まとめ
・学習理論とは、人間(生き物)は、「こうやって学びますよ」という考え方の事
・S-R理論(連合説)とは、刺激(Stimulusスティムレス)に結び付いて反応(Responseレスポンス)が起こると考える理論
人間や動物の行動に関する条件づけ(conditioningコンディショニング)の基礎理論
認知理論は、五感(視覚、嗅覚、味覚、触覚、聴覚)の知覚から得られた情報が、それまでの学習に影響を受けて認知されると考える理論で、トイレの芳香剤とお花畑のやつ
・パブロフ「古典的条件づけ」(パブロフの犬)
・スキナー「道具的条件づけ」(スキナーボックス)
・ソーンダイク「試行錯誤説」(猫の箱の紐実験)
・ワトソン「S-R理論」(アルバート坊やの実験)
・トールマン「サイン・ゲシュタルト説」(ネズミの迷路や白黒トビラ)
・ケーラー「洞察説」(チンパンジーのバナナ取り)
・パンデューラー「モデリング理論」(ボボ人形実験)
覚えるべき人物とポイントですね
教員採用試験に向けてあなたも頑張ってください(^^)
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